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萌えたら書く。
勢いでしか書けないんで書いた。
ヘ○リアで希/日。
『猫に、なりたい。』
彼がそう呟いたのはいつのことだっただろう。
一瞬の幸せを
「……日本?」
「えっ……、あ、はいっ?」
のんびりとしたその声に、急に私は意識が水面から浮き上がるように戻り、慌てて返事を返した。
いつのまにか空を見上げていて、膝元に視線を戻せば、ギリシャさんは私を見上げていて。
心配そうな表情で私の膝から顔をあげようとしたから、私はそれを左手で制した。
少し浮き上がった頭が、それに答えるように、素直にぽふっ、と可愛らしい音を立ててまた膝に倒れる。
きつすぎない太陽の光が差す縁側、心地よい温度の風がゆっくりと吹くたびに、そのふわりとした髪がさらさらと音を立てて揺れた。
そんな平和な光景に、また意識が遠退きそうになる。
「手。」
「え?」
「手が………止まってた、から。」
そっと、彼の髪に絡ませたままだった私の手の上に、彼の手がのせられて、ああ、と言葉を洩らした。
先刻までこの柔らかな髪を撫でていたのを思い出したのだ。
彼が心地よさそうに眼を細めた表情が眼に浮かんでくる。思わずくす、と笑みを零した。
なんて不釣合いなのだろう。
「すみません、なんだかぼうっとしていた様です。疲れてて……っ。」
ぺたり。
暖かい、彼の手が、私の頬を包み込んだ。
その暖かさはまるで柔らかな日差しのようで、暖かくて暖かくて、優しい。
「ギリシャさん?」
彼のその手に自分の手を重ねる。途端に伝わってくる熱に、自分の手がこんなにも冷えているということを改めて知った。
もう、春だというのに。
「……何か、あった?」
体格の良い彼だというのに、首を傾げて問いかけるその姿は、まるで小動物の様だ。
「……少し。」
不安げに揺れるその眼を、いつものあの色に戻したくて、微笑みながらそう言うのに、彼はその色を少しも変えてくれない。
「何があった、の?」
柔らかな物言いだというのに、その声はそれを聞き出そうと必死になっている。はぐらかしても無駄だということに気付けないほど、私は鈍感ではない。
「……いつまでたっても、なくならないなぁ、と思いまして。」
争い、殺し合い。
いつでも巻き込まれないように必死に、私は「国」としての役目を果たそうとしているけれど。
足掻いても無駄なのではないのかとか、意味がないのではないのかとか。
そんな声が、聞こえてくるのだ。
他でもない、自分自身から。
『生まれ変わったら、猫になりたい。』
『え……。どうしたんですか、急に?』
『猫になって、貿易とか、争いとか、そういうものと無関係な生活がしたい。』
『毎日…、好きな場所で空を見ながら昼寝でもして、気ままに生きてみたい。』
『多分、叶わないだろうけど。』
彼は、夢を語っているけれど、心の中ではちゃんと無理だと分かっている。
だからこそそんな空想を語れるのだ。
でも、私は。
夢を否定する言葉を呟きながら、心の中ではそれを信じているのだ。
…そしてその度に、傷つく。
わかっている。それらは全て自分の所為だ。
自分の行いに、自分が嘆くなんて、何の意味もないこともわかっている。
全てが幸せになる確率よりも、また新たな戦の種が生まれるほうが高いと、わかっているのに。
今だって世界の何処かで誰かが殺されているのに。
優しい、太陽の光。
優しい、心地よい風。
優しい、……貴方の温もり。
あまりにも幸せな、それらが私を錯覚させる。
だって、あまりにも今の私は幸せなのだ。
争いごととも、日々の喧騒とも切り離されているような感覚で。
「……日本。」
それでも。
…それでも、今だけは。
幸せな世界を。
「………キス。」
「え?」
「キス、しましょうか。……ネコ吾郎さん?」
あなたの瞳が色を変える。
小さく震えていた手が落ち着きを取り戻していく。
あなたのいる世界はこんなにも幸せだから。
だから今だけは。
世界に幸せが広がっていくのを感じて
そんな未来が待っていることを願って
触れあったこの温もりが永遠だと、信じて。