「ああ、春ですねぇ……。」
桜の花弁はひらりひらりと舞い、暖かな風がゆっくりと縁側に吹き渡り。
日本はこれまた温かな湯のみを両手に持ったまま、朗らかにそう呟いた。
「なんてのどかな昼下がりでしょう。」
ギリシャさんやトルコさん達を誘って、花見でもしようか。
イタリア君や、ドイツさんも一緒に。
多少五月蝿くはなりそうだけれど、きっと賑やかで楽しい花見になる筈だ。
風が葉を揺らし、ひらひらと落ちて来る音。小鳥の可愛らしい声。
それらに包まれた日本が、その賑やかな光景を思い浮かべながら微笑していたそのとき。
「にっぽーん!!おっぱい揉ませるんだぜーっ!!」
「いきなり現れてその台詞!?も、揉ませませんよ!!!」
いきなり、その「のどかな昼下がり」は壊された。
初恋現在進行形
それから日本が韓国とまともに話をすることができたのは十数分たってからだった。
「っぁーもー……。なんで揉ませてくれないんだぜ!?」
「っはぁっ…、ぁ、貴方に、揉ま、せる、胸など、ありませんっ!!…はぁ…。」
必死に逃げて戦って、ようやく落ち着いたのに、十数分。
息も切れ切れな自分と違って、汗一つかいていない相手に、日本は自分の老いを感じた。
「はぁ、年寄りには辛いんですよ?もっと労わって欲しいです。」
「労わる……日本!!お年寄りを労わる起源は俺なんだぜ!!」
「ああもうそれでいいですから労わってください!!」
ぶつぶつと小さく文句を呟きながら縁側に座り、ぬるくなった茶を一気に飲み干す。からからに渇いた喉に、それは案外心地よく通った。
「あ、日本、それ。」
「ん……、はい?」
「桜のはなびら入ってたんだぜ?」
「…え。」
思わず自分の喉に手を当てる。湯のみに視線を向ければ、丁度、その湯のみの中へとひとひら、花弁が入っていく光景が見えた。
「だ……大丈夫なのか?飲んでも大丈夫だったのかだぜ?」
相手は自分と同じように縁側に座り込み、慌てながら聞いてくる。
「いえ、多分大丈夫だと思いますけど……。
心配、してくれてます?」
何気なくそう聞けば、う゛っ、と、韓国さんは後退りし、恥ずかしそうに頬を掻いた。
見詰め続けていれば、あー、とか、うーとか、言いたいのに言葉がわからないような、そんな表情をして黙り込む。ひとひら、また花弁が落ちた。きっと一分だってたっていない筈なのに、その沈黙は長く長く感じられた。
やがて彼はゆっくりと口を開き、小さく呟いたのだ。
「………嫌いなのに。」
「え?」
聞き返した理由は、聞こえなかったからではない。
それでも彼は困惑した、その体格とは不釣合いな、まるで子供のような表情をしたまま私から視線を逸らした。
「……嫌いなのにっ……………、………ほっとけないん、だぜ。」
固まった。
身体のそこから固まってしまったみたいで、彼の顔から眼を逸らすことができなかった。
そして彼の耳が赤く染まっているのを見たとき、自分の顔も赤く染まっていくのを感じて、それでもずっと固まったまま、俯くことすらできなくて。
彼が床から私に視線を移した、その途端。彼も私と同じように頬まで真赤に染まっていった。
さらり、と、私の髪を風が揺らして、一瞬私の視界は黒で覆われ見えなくなった、その時。
床が小さく軋む音が聞こえて、ようやく私は動けるようになったけれど。
そのとき、彼が私にゆっくりと近づいてきているのがわかって、また、思考が止まった。
彼の両手で、両肩を掴まれる。それはとても弱い力だったけれど、振り払うことなどできなかった。
ゆっくりと、顔が近づいてくる。
「日本……。」
そう呟いた彼の表情といったら。
普段見たことも無いような、大人の表情で。
ああ、駄目だ。
そう心の中で呟いて、ゆっくりと眼を閉じたその瞬間。
「にっほ~ん!!我が遊びにきてやったあるよ!!」
身体が動くままに、私は彼を突き飛ばしました。
「ちゅちゅちゅ、中国、さ、ん……。」
「にーぃはぁーぉっ!!ん?韓国も一緒あるか?…どうしたある?その格好。」
韓国さんは縁側から落ちて、地面に頭をぶつけてから、ぴくりとも動かな、い……。
「嫌ぁああああああ!?韓国さん!?韓国さぁーーーん!!!」
「あ、あごぉ………アレは……花畑?そして川?泳げそうだぜ~」
「泳いじゃ駄目です!あっちに行ってはいけません!!韓国さん!!」
「ななな、何あるっ!?我のせいあるかっ!?う、う…うわぁあああん!!」
「貴方も泣かないでください!!か、韓国さ~ん!!」
それから落ち着くまで、三十分。
泣きながら縋り付く中国さんにはキ○ィちゃんグッズをお土産にしぶしぶ帰って頂いた。
「兄貴め……。」
「五月蝿いですよ、もう。普段の素行が悪いからこうなるんです。」
「………せっかく、あとちょっとでうりならまんせーだったのに。」
「え?」
「……なんとなく、わかったんだぜ、多分。…だけど今日は疲れたんだぜ。だから。」
突然、額に触れた柔らかい感触。
「今日のところはこれだけでいいんだぜっ!!」
そのまま彼は走り去っていった。途中、あごぉ!!という叫び声が聞こえたから、多分転んだのではないだろうか。少し心配になったけれど、今は私自身が危ない状況だ。
とりあえず、寝よう。うん、もう日も暮れたのだから。
布団に潜り込み眼を閉じれば、彼のあの大人びた表情が浮かんできて。
今度会ったら一発殴ろうと決意した。
日本が韓国に額に口付けされたということに気付くのは、その次の朝。
またうりならまんせー!と叫びながら突入してきた韓国を見たときだった。
あれ、こんな砂糖吐きそうな青春っぽい小説書こうなんて思ってなかったのに(ちょ
これ本当は韓→日書こうと思ってたのに(ぇ
こんな韓/日大好きだよ。
ときどき大人みたいな表情する韓国に振り回されてればいいww
PR