暗い。
暗い暗い暗い。
古泉報われない。古泉不幸ものがたり。(山田太郎)
それでもいいかたはどうぞ。
力を、失った。
神が、消滅した。
涼宮ハルヒにはもう
願望を実現する力が無い。
長門有希は情報統合思念体の元へと戻ってしまった。
朝比奈みくるも状況説明の為未来へ戻り…もう戻ってこないだろう。
涼宮ハルヒが、力を失った。
涼宮ハルヒのその力があったからこそ、僕達はこうして集まっていた。
それが無くなった今、あの二人には此処に居る必要が無い。
二人には帰る場所がある。
未来へ、宇宙へ。
この時代に、この世界に留まることはあの二人には出来ない。
それは彼もわかっていた。
いつか二人は帰ってしまうこと。
自分の居た場所へ。居るべきところへ。
もう、二度と会えないことも全て。
わかっていたけれど…
あまりに、それは早すぎた。
ようやく彼の気持ちに区切りがついた、その次の瞬間だったのに。
そして二人は帰ってしまった。
彼が事実を受け止めることができないまま。
まるでそれら全てが ふと頭を駆け巡る思い出が
白昼夢であったかのように。
でも僕は違う。
涼宮ハルヒが力を無くしたように。
僕やその同志たちも同じように能力を失った。
「機関」も消滅した。
僕はもう普通の高校生に戻れたんだ。
僕はもう自分を偽らないでもいいんだ。
彼と高校生らしく遊べる。
休みの日は遠出して、街中を意味も無く歩くのもしてみたい。
でも、そんなことよりも。
彼に、本当の自分で接することができる。
それが何より嬉しかった。
それを僕はずっと待ち望んでいた。
誰よりも大切な人だから。
ずっとずっと。誰よりもずっと。
翌朝通学路を歩いていると彼がいた。
もうこれからは敬語を使わなくてもいいんだ。
そう思えば、思わず顔が綻ぶ。
普通に歩いていても追いつけそうだけど、僕の足は無意識に速く動いていた。
「おはよう、ございます。」
そんな自分の心情とは裏腹に、声が出た。
「…古泉?」
振り向いた彼は予想していた通り、まだ微かに眼が赤くなっている。
「眼、赤くなってますよ。大丈夫ですか?」
違う。
言いたいことは合っているけれど
違う……違う……………!
すると彼はもう癖になってしまったお得意のやれやれ、を呟いて、
額に手を当てた。その姿は頭痛をこらえている人の様だ。
「…お前な、人の心配をしてくれるのはいいが…。
心配するときにそんな風に 笑ってちゃ 嫌味に聞こえるぞ。」
…え?
カーブミラーに映る彼と僕の姿。
僕はいつもどおりに
……笑っていた。
頭に小さな疑問が浮かぶ。
けれどそれは巨大な恐怖の波に飲み込まれ消えていった。
視界が歪む。彼が見えない。
どうして?
僕は三年前と同じように接してもいいのに。
もう演技なんかしなくても良いんだから。
三年前……と……………
同じ よう に ………?
あれ
本当の僕は
どんな
僕
だった?
彼の声が、どこか遠く聴こえた。
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